住宅ローンはいくらまで借りられる? 自分の年収から計算する無理の無い返済額
住宅ローンで借り入れできる上限額のことを、「借入可能額(借入限度額)」といいます。
借入可能額は、申込者の収入(年収)や借入期間、返済負担率などを元に金融機関で算出しており、この額と申込者が希望する額とを照らし合わせて、審査を行っています。
つまり、あらかじめ借入可能額を把握して申し込めば、住宅ローンの審査に通る可能性が高まるということです。
では、現在の年収で借入可能額はどれくらいになるのでしょうか。
ここで、年収別におおよその借入可能額をシミュレーションするとともに、無理のない返済プランを立てるポイントもお伝えします。
借入可能額の計算に必要な要素
借入可能額は、「収入」「返済期間」「返済負担率」「金利」などの要素を元に求めます。
まずは、それぞれの要素についてお伝えしましょう。
収入(年収)
借入可能額を決める要素の一つが、収入(年収)です。
年収が多いほど借入可能額を増やせますが、審査に通りやすいかどうかは別問題です。
金融機関では、長期的に安定した収入を得ていることを審査で重視します。
給与所得者で勤続年数の長い人が審査に有利といわれるのも、金融機関が「収入の安定性」を見ているからです。
返済期間
住宅ローンの返済期間は、最長35年と設定している金融機関が多いです。
一定の条件を満たす方なら50年まで借り入れできるところもあります。
借入可能額を増やすには、返済期間を長く設定することがポイントです。
ただし、金融機関は安定した収入があるうちに完済を求めますから、完済時の年齢が定年後にならないことも審査に通りやすくなるポイントといえます。
また、返済期間が長くなるほど利息の支払額が増える点も注意が必要です。
返済負担率
返済負担率は、30~35%くらいに設定している金融機関が多いようです。
返済負担率を高く設定すれば借入可能額を増やせますが、上限ギリギリに設定するとローン返済が家計を圧迫するおそれがあります。
無理のない返済プランを考えるなら、返済負担率を20-25%以内が良いといわれますから、あまり高く設定しすぎないように注意しましょう。
金利
金利も、借入可能額に大きく影響する要素です。
金利が高くなるほど借入可能額は減りますから、できる限り金利の低い商品を選ぶことがポイントといえます。
一例として、年収400万円の方が返済期間35年、返済負担率25%で借入可能額を求めたとき、金利1%であれば約2,952万円を借り入れできますが、金利が2%だと約2,515万円と1%の違いで400万円以上も減ってしまいます。
返済が始まってから金利が上昇すれば、返済額も増えて家計を圧迫する恐れがありますから、それも踏まえて余裕をもった借入額を検討することが大切です。
年収ごとの住宅ローン借入可能額の目安
これまでの要素を踏まえて、住宅ローンの借入可能額の目安を年収別でシミュレーションしました。
毎月の返済額も求めましたので、返済プランを立てる際のポイントと併せてお伝えします。
なお、シミュレーションの条件は、返済期間35年、返済負担率は25%、金利は全期間固定で1.5%です(返済方法は元利均等返済)。
また、毎月の返済額にはボーナス返済を含んでいません。
年収300万円の借入可能額は2,041万円
・借入可能額:2,041万円(毎月の返済額は62,492円)
年収300万円の方でも、約2,000万円の住宅ローンを借り入れることが可能です。
毎月の返済額は6万円ちょっとですから、家計への負担も大きくないでしょう。
ただ、給与所得者の場合はボーナスを含めて年収300万円だと、毎月6万円の返済が重く感じる方もいらっしゃるでしょう。
現在の支出状況を踏まえて家計が苦しくなると判断される場合は、返済負担率を20%くらいに下げて借入可能額を減らすことも検討しましょう。
ちなみに、返済負担率を20%に下げたときの借入可能額は1,633万円です。
年収400万円の借入可能額は2,721万円
・借入可能額:2,721万円(毎月の返済額は83,312円)
年収400万円なら、約2,700万円が借入可能額と試算されます。毎月の返済額は8万円を上回るくらいです。
年収400万円といっても、家計の状況は一人ひとり異なります。
たとえば、ボーナスのある給与所得者の場合、毎月の給与は23万円前後という方が多いでしょう。
そのうち3分の1以上が住宅ローンの返済で消えてしまいますので、残りの額で生活費や貯蓄を賄えるかがポイントといえます。
ゆとりがない場合は、返済負担率を20%くらいに下げて検討することも大事です。
年収500万円の借入可能額は3,402万円
・借入可能額:3,402万円(毎月の返済額:104,163円)
年収500万円ある方なら、3,000万円以上の融資も期待できます。
返済額は毎月10万円以上になりますが、ローン支払後の残額でも生活に余裕があれば、問題ないでしょう。
ただ、返済負担率を上げる判断は抑えたいところです。
返済負担率が30%にすれば、借入可能額を4,000万円前後に増やせるものの、毎月の返済額は12万円以上になります。
無理のない返済プランを立てる上でも、返済負担率は25%以内にしておきましょう。
年収600万円の借入可能額は4,082万円
・借入可能額:4,082万円(毎月の返済額:124,984円)
年収600万円の借入可能額は、4,000万円を超えます。
毎月の返済額は12万円くらいが目安です。
これくらいの収入が安定してある方なら、返済負担率を30%に上げて借入可能額を増やしても問題ないかもしれません。
ただし、毎月の返済額は15万円を超えますから、現在の支出状況をふまえて検討することが大事です。
ゆとりがあれば貯蓄して繰り上げ返済に充てることで、将来の家計負担を抑えられます。
年収700万円の借入可能額は4,762万円
・借入可能額:4,762万円(毎月の返済額:145,805円)
年収700万円以上の方なら、返済負担率を30%に設定しても余裕があるでしょう。
返済負担率が30%の場合、借入可能額は約5,700万円、毎月の返済額は17万円くらいです。もちろん、家計の状況と相談しながら決めることが大切です。
借りられる金額と返せる金額は違う
住宅ローンを考えるとき、「いくら借りられるか?」という点に注目しがちですが、「いくらまでなら返せるのか」という視点で考えることも大切なポイントです。
上記でもお伝えした通り、同じ年収の方でも家計の状況は一人ひとり異なります。
たとえば、年収400万円の借入可能額は約2,700万円、毎月の返済額は8万3,312円ですが、現在の家計の状況から毎月8万円以上のローン返済を重く感じる方なら、たとえ年収が400万円以上あっても、約2,700万円を借り入れることはおすすめできません。
約2,700万円を借り入れて良い人は、「毎月8万円以上をローン返済に充てても生活に支障がない方」なのです。
このことから、借入可能額を検討するときは「毎月返済できる金額」からもシミュレーションすることが重要だといえます。
毎月の給与から、生活費や子どもの教育費、貯蓄に充てる額などの必要経費を差し引いて「毎月返済できる額」を求め、そこから借入可能額を試算することも、住宅ローンと賢く付き合う方法といえるでしょう。
毎月返済できる額から借入可能額をシミュレーション
ここで、毎月返済できる額から借入可能額を試算しました。
借入条件は先ほどと同じく、返済期間35年、返済負担率25%、全期間固定金利1.5%です(返済方法は元利均等返済)。
毎月の返済額 |
借入可能額 |
6万円 |
1,959万円 |
7万円 |
2,286万円 |
8万円 |
2,612万円 |
9万円 |
2,939万円 |
10万円 |
3,266万円 |
11万円 |
3,592万円 |
12万円 |
3,919万円 |
13万円 |
4,245万円 |
14万円 |
4,572万円 |
15万円 |
4,899万円 |
限度額ギリギリまで借り入れるリスク
上記のシミュレーションでは、返済負担率を25%に設定して試算しましたが、多くの金融機関では30~35%まで設定できます。
返済負担率を高く設定すれば、それだけ多くの借り入れができるようになりますが、限度額いっぱいの融資を受けるのは、おすすめできません。
当たり前のことですが、借入額を増やせば毎月の返済額も増えます。
現在は問題ない方でも、長い返済期間のあいだにはローン返済が家計を圧迫することも想定されるでしょう。
家族が増えれば生活費も増えますし、子どもの教育費もかかります。
あるいは、病気やケガで収入が一時的に途絶えることも考えられます。
転職や異動があって収入が減る可能性もあるでしょう。
家計の状況に変化があっても滞ることなく返済を続けられる借入額こそ、無理のない借入可能額といえるのです。
住宅ローンの返済が滞るとどうなる?
では、住宅ローンの返済が滞るようになると、どのようなことになるのでしょうか。
まず、金融機関では信用情報機関に金融事故の報告(ブラックリストへの登録)を行います。
これにより、自動車ローンやカードローンなどほかのローン審査にも影響を与え、融資が受けられなくなる可能性があります。
さらに滞納が続けば、抵当権を設定した家や土地を差し押さえるために、裁判所に申し立てることがあります。
仮に裁判所が申し立てを認めれば、強制退去させられ競売にかけられることになるのです。
こうした事態を避けるためにも、無理のない返済プランを立てられる借入可能額を決めることが重要なのです。
まとめ
借入可能額を求めるときは、今の収入で借りられる金額だけでなく、毎月のローン返済額にも着目して検討することが大切です。
限度額いっぱいまで借り入れて理想のマイホームを手に入れたとしても、返済が始まってからローン地獄に追われることになれば、理想の暮らしとはかけ離れたものになるでしょう。
「借りたお金は返さなければならない」ことを忘れずに、無理のない資金計画を立てられる借入額を検討しましょう。
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