つなぎ融資って何?使うタイミングや手数料・金利をわかりやすく解説
一部の金融機関では、住宅ローンのほかにも「つなぎ融資」というマイホーム購入時に使える融資商品を扱っています。
主に、注文住宅を建てる方が利用する商品ですが、具体的にどのような場面で使うのでしょうか。
ここでは、つなぎ融資を利用するタイミングや借り入れから返済までの流れ、手数料や利息、利用する際の注意点など、つなぎ融資の賢い使い方についてお伝えします。
つなぎ融資とは?
つなぎ融資とは、住宅ローンの実行前に必要な資金を一時的に借り入れできる融資商品のことです。
住宅ローンが実行されるのは、建物が完成して施主へ引渡すときが通例です。
しかし、注文住宅を建てるときは、土地の購入費用や施工会社に支払う着工金など、ローン実行前にまとまった資金が必要になる場面がいくつかあります。
これらは自己資金で賄わなければならず、貯蓄の少ない方だと資金繰りが大変です。
こうした資金繰りの悩みを解決する方法の一つが、「つなぎ融資」です。
つなぎ融資を使うことで、自己資金の少ない方でも理想の土地を購入できたり、着工金を支払って家の工事を始めたりすることが可能になるのです。
つなぎ融資の具体的な使い方
一例として、「自己資金を500万円用意できる方が、3,500万円の注文住宅を購入する」というケースで、つなぎ融資の使い方を説明します。
なお、注文住宅の内訳は以下の通りです。
・土地代:2,000万円(自己資金500万円も使って購入する)
・着工金:500万円
・中間金:500万円
・残金:500万円
上記の条件で、つなぎ融資を借り入れるのは「土地代」「着工金」「中間金」を支払うタイミングになります。
残金の500万円を支払うときは、すでに住宅ローンが実行されていますので、つなぎ融資は必要ありません。
つなぎ融資の借入額は、土地代が自己資金分(500万円)を差し引いた1,500万円、着工金と中間金がそれぞれ500万円ずつで、合計2,500万円です。つなぎ融資がなければ、2,500万円をすべて自己資金で賄うことになりますから、資金繰りに相当苦労することが想定されるでしょう。
つなぎ融資の申し込みから返済までの流れ
ここでは、土地探しから注文住宅を建てるケースで、つなぎ融資の申し込みから返済までの流れを簡単に説明します。
【STEP 1】つなぎ融資と住宅ローンの利用を申し込む
【STEP 2】つなぎ融資の審査(住宅ローンの事前審査も同時進行)
【STEP 3】不動産会社と土地の売買契約を結ぶ
【STEP 4】つなぎ融資の契約を結んで融資の実行(返済スタート)
【STEP 5】住宅ローンの本審査
【STEP 6】住宅ローンの実行~つなぎ融資の清算
つなぎ融資は、原則として住宅ローンを借り入れる金融機関と同じところで申し込みます。
これは、住宅ローンを実行することで清算されるしくみだからです。
つなぎ融資を申し込むときは、住宅ローンの申し込みも一緒に行いましょう。
契約はつなぎ融資の方が先になりますが、つなぎ融資の金銭消費貸借契約を結ぶ際には、土地の売買契約を結んだときの「不動産売買契約書」の提出が求められます。
また、一部の金融機関では施工会社と結ぶ「工事請負契約書」の提出を求めるところがあります。
この場合、つなぎ融資を契約するまでに建築計画も進めておく必要がある点には注意が必要です。
つなぎ融資の利用を検討されている方は、理想の土地が見つかったら施工会社に建築プランの依頼をしておくと、スムーズに契約が進められます。
つなぎ融資の実行は、「土地代を支払うとき」「着工金を支払うとき」など、必要なタイミングで複数回実行されますが、そのタイミングや実行回数は金融機関によって異なります。
あらかじめ確認した上で、金融機関を選ぶこともポイントです。
つなぎ融資の諸費用について
つなぎ融資を契約する際には、事務手数料や印紙代といった諸費用がかかります。
諸費用は住宅ローンの実行で清算されませんので、別途用意する必要があります。
諸費用の内訳や金額は、金融機関によっても異なりますが、主な項目としては以下の通りです。
・事務手数料(融資手数料):約10万円
・印紙代:2万円(借入額が1,000万円を超えて5,000万円以下の場合)
・保険料(不要な金融機関もある)
つなぎ融資は無担保ローンのため、返済が滞ったときのために保険への加入を融資条件としている金融機関もあります。
その場合、保険料が必要になりますので、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
つなぎ融資の利息返済額はいくらになる?
つなぎ融資の清算は、住宅ローンの実行と一緒におこないますが、実行されるまでの期間にも「利息の返済」があることは覚えておきたいポイントです。
利息の返済は融資が実行された翌月から始まり、清算されるまで続きます。
ここで注意しなければいけないのが、つなぎ融資の金利は住宅ローンよりも高いという点です。
2022年現在で、住宅ローンの金利は1%前後ですが、つなぎ融資の金利は3%前後の金融機関が多くみられます。
金利が高い理由は、つなぎ融資が無担保ローンだからです。
では、つなぎ融資の借入期間中に支払う利息は、どれくらいの額になるのでしょうか。
以下のケースをもとに、シミュレーションしてみます。
2,500万円のつなぎ融資を6カ月借り入れたときの利息返済額
つなぎ融資は「土地代」「着工金」「中間金」など、必要なタイミングで融資が受けられます。
つまり、それぞれの借入期間が異なるため、ここでは以下の条件で求めることにします。
・土地代1,500万円、借入期間は6カ月
・着工金500万円、借入期間は4カ月
・中間金500万円、借入期間は3カ月
なお、つなぎ融資の利息は3%として借入期間中に変動しないことを前提に、利息返済額を求めると、以下の通りです。
【土地代の利息】約22.5万円
【着工金の利息】約5万円
【中間金の利息】約3.75万円
わずか半年間の借り入れで、約31万円の利息返済額が必要になるのです。
この費用は、自己資金で賄うことになりますから、あらかじめ準備しておく必要があります。
つなぎ融資を利用する際の注意点
つなぎ融資を利用するときは、以下の注意点も把握しておくことが大切です。
金利が高い
これまで説明したように、つなぎ融資は「金利が高い」ことが注意点の一つです。
借入額が多くなれば、利息返済額も多くなります。
また、天候の影響などで建築期間が延びることも、返済額が増える一因になります。借入額を検討する際には、利息返済額も併せてシミュレーションされることをおすすめします。
つなぎ融資を扱わない金融機関もある
つなぎ融資は、住宅ローンと一緒に申し込むのが原則ですが、住宅ローンを扱っていてもつなぎ融資は扱っていない金融機関が多いことも、注意したいポイントです。
検討している金融機関がある方は、つなぎ融資を扱っているかどうかも確認しましょう。
融資のタイミングや実行回数は金融機関ごとに異なる
つなぎ融資の実行条件は、金融機関ごとに異なります。
たとえば、「土地代と着工金の支払いの2回のみ」と融資のタイミングや回数が決まっている金融機関もあれば、「6回までならいつでも実行可能」と柔軟に対応できるところもあります。
また、1回あたりの融資額にも上限を定めている金融機関も多いです。
金融機関を選ぶ際には、つなぎ融資を扱っていることを確認した上で、「どのタイミングで」「いくら必要か」を把握し、それに適した融資を実行してくれるところに申し込むことが重要になります。
なお、融資を実行する際には手数料がかかりますし、金融機関によっては実行するたびに契約の結び直しが必要なところもあります。
この点も、事前に確認しておきましょう。
つなぎ融資を使わない選択肢も
金利の高さや融資実行条件に制約があるなど、つなぎ融資を利用するには注意点も多く、「利用しないほうが賢明だ」と感じている方がいらっしゃるかもしれません。
とはいえ、つなぎ融資を使わずに多額の自己資金を用意する方法はあるのでしょうか。
現実的な方法として、以下の施策が考えられます。
親から資金援助してもらう
自己資金の少ない方は、親に資金援助をしてもらえないかと相談するのも一手です。
親から借りるのであれば金利負担もありませんし、ローン借入額を減らせるので将来の返済負担を軽減できます。
ただし、多額の資金を譲り受けると贈与税が課せられる可能性がある点には注意が必要です。
贈与税には、住宅取得に関する贈与であれば最高1,000万円まで控除できるという特例があります。
この特例は2023年12月31日までという期限付きですから、検討されている方は早めに動くことをおすすめします。
住宅ローンの分割融資を使う
一部の住宅ローンには、「分割融資」が可能な商品もあります。
引渡し前でも融資を実行できるため、土地の購入費用や着工金の支払いなどを、住宅ローンで賄うことも可能です。
しかも、金利は住宅ローンの金利が適用されますから、つなぎ融資よりも利息支払額を抑えられるというメリットもあります。
なお、分割融資が可能な住宅ローンは少なく、金融機関の選択肢が狭まります。
また、融資実行のたびに手数料がかかるため、実行回数が多いとつなぎ融資の利息返済額よりも高くなる可能性がある点には注意が必要です。
まとめ
自己資金の少ない方にとって、つなぎ融資は、上手に活用すればマイホーム購入をサポートしてくれる強い味方になってくれます。
ただ、住宅ローンとは別契約ですから事務手数料などの諸費用が必要ですし、金利が高いため返済額が多くなるリスクは把握しておきたいポイントです。
金融機関を選ぶときは、「必要なときに必要な額を融資してくれるか」という点を確認した上で、自分に適したところを選びましょう。
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