老後はマンションと戸建てどちらが良いのか?老後を見据えた住まいの選び方
セカンドライフを見据えて、いま住んでいる戸建てから都心のマンションに住み替える熟年層の夫婦が増えているようです。
老後を考えると、広々とした一軒家よりもマンションの方が管理しやすく、また街中にあって生活利便性が良いことも、人気を高める一因になっています。
ただ、住み慣れた家を離れるのは寂しい気持ちもあるでしょう。
家が古くなって住み替えるのであれば、リフォームや建て替えという選択肢もあります。
ここで、老後の住居選択として、マンションと戸建てとではどちらが適しているのかを比較してみましょう。
シニア世代の3人に1人が老後を見据えて住み替えている
老後を見据えて家を住み替えるシニア世代は、どれくらいいるのでしょうか。
不動産流通経営協会が調査した「シニアの住宅に関する実態調査」によると、45歳以上の方で住み替え経験がある人は38.5%だったそうです。
住み替えのタイミングは「定年退職」と回答した人が30.7%でもっとも多く、ライフスタイルが変わるのを機に新しい家を購入していることがうかがえます。
次に、住み替え経験がある方々が選んだ物件の種類を見ると、戸建住宅が48.3%、マンションが28.1%、賃貸住宅が23.6%という結果でした。
持ち家の戸建てを選ぶ人が最も多いものの、マンションや賃貸住宅を選ぶ人を併せると過半数を占め、戸建てを上回ることがわかります。
この調査では、老後の住まいに対する意識についてもアンケートを取っています。
それによると、「多少部屋が狭くても、手元に資金を残しておきたい(66.8%)」「老後はできるだけコンパクトなサイズの方が良い(66.5%)」「多少部屋が狭くても利便性の高い場所が良い(65.8%)」など、経済的負担や管理のしやすさ、利便性などを住み替えの理由として挙げる方が多いとまとめています。
これらの意見からも、老後の住まいの選択肢として、マンションが適していると考える方も少なくないと考えられるでしょう。
なお、新しい住まいの購入費用について、住宅ローンは使わず、退職金やそれまで住んでいた家の売却資産で購入される方が大多数のようです。
参考:
一般社団法人不動産流通経営協会「シニアの住宅に関する実態調査 2019年6月」
https://www.frk.or.jp/suggestion/201906_Senior.pdf
老後におけるマンションのメリット・デメリット
老後の住まいにマンションを選択することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
また、デメリットや注意点は何でしょうか。
老後の生活の観点から、マンションのメリットとデメリットをお伝えしましょう。
老後にマンションを選ぶメリット
マンションを選ぶメリットの一つに、「セキュリティが充実している」ことが挙げられます。
エントランスはオートロック、出入口やエレベータ内には防犯カメラが設置されており、外部からの侵入者を抑止します。
大きなマンションだと管理人が常駐しており、何かあったときには相談にのってくれるでしょう。
高齢女性の一人暮らしでも安心です。
また、「立地の良さ」もマンションを選ぶメリットです。
マンションは、駅前や商業施設、医療機関などに近い、利便性の良い場所に建っている物件が多く、車がなくても生活に不自由することはありません。
「共有部分は管理会社がメンテナンスする」ことも、メリットでしょう。
建物周辺や廊下といった共有部分の清掃から、外壁や共有設備などの修繕工事まで、すべて管理会社に任せられます。
専有部である室内は自分でメンテナンスしなければなりませんが、戸建てよりも管理する部分が少ないため、足腰が弱っている方でも楽に過ごせます。
老後にマンションを選ぶデメリット
老後にマンションを選ぶデメリットの一つが、「制限事項が多い」ことが挙げられるでしょう。
ペットと一緒に暮らす場合、物件によってはペットを飼うのが禁止されていたり、種類や大きさに制限を設けていたりするところもあります。
また、リフォームをする際も、管理規約によって工事内容が制限されて実現できないこともあるので、注意が必要です。
庭いじりを楽しみたい方には、「庭がない」こともデメリットといえます。
庭付きの物件もありますが、管理規約によって使い方が制限されていたり、退去時には原状回復を求められたりすることもあります。
意外と見落とされているデメリットとして、「ランニングコストが高い」ことも注意点です。
管理費や修繕積立金が毎月かかりますし、車を持っている場合は駐車場代も別途必要です。
こうした費用を考えず、購入後に家計が圧迫して困っている年金暮らしの方が多いのも実情です。
老後における戸建てのメリット・デメリット
続いて、老後の住まいに戸建てを選ぶときのメリットとデメリットを見ていきましょう。
老後に戸建てを選ぶメリット
戸建ては、「自由度の高さ」が一番のメリットといえます。
ペットを飼うのも自由ですし、楽器の演奏も近隣に配慮すれば自由。
リフォーム工事も、マンションほどの制限はありません。制限を受けることが少なく、ゆとりあるセカンドライフが送れるでしょう。
敷地の広さなどにもよりますが、「庭がある暮らしを楽しめる」ことも、戸建てを選ぶメリット。
ガーデニングを楽しむもよし、ペットの遊び場にするもよし、日本庭園をつくるもよし。
庭の使い方にも、制限はありません。
以前から住んでいる土地であれば、「近隣に知り合いが多い」ことも戸建てのメリットといえるかもしれません。
困ったことや不安なことがあれば、近所の人に相談したり互いに助け合ったりできるので、心強いでしょう。
一方、マンションだと、同世代の方が多い物件なら新しいコミュニティをつくれるかもしれませんが、往々にして近所付き合いが希薄になりがちです。
老後に戸建てを選ぶデメリット
戸建てのデメリットは、「管理が大変」なことが挙げられます。
広々とした敷地に住めるものの、清掃や修繕メンテナンスなどはすべて自分で対応しなければなりません。
高齢になると管理が難しくなると考え、マンションに住み替える人もいらっしゃいます。
管理が大変な割に、「活用されない空間が生まれやすい」ことも、戸建てのデメリットです。
特に2階は、階段の上り下りが難しくなるとデッドスペースになりやすいです。
戸建てを選びたい方は、平屋の家も検討されてはいかがでしょうか。
このほか、リフォームをする場合に備えて「自己資金を蓄えておく必要がある」ことも大切です。
大地震や風水害など、いざというときに頼れるのは自分自身ですから、資金計画をしっかり立てておきましょう。
賃貸を選択するメリットと注意点
資産整理を目的としている方など、老後は賃貸住宅への住み替えを検討されている方もいらっしゃるでしょう。
賃貸を選ぶメリットは、持ち家を購入するより初期費用を抑えられるため、住み替えがしやすいことが挙げられます。
また、エアコンや給湯器など室内に常設された設備もオーナーが管理しますから、修繕費用も不要です。
ただし、そこに住み続ける限り毎月家賃が発生します。
長く住み続けると、持ち家を購入した方が安くなることもあります。
また、賃貸にもオーナーや管理会社の審査があることも注意点です。
民間不動産会社が調査した報告によると、65歳以上の4人に1人が「入居を断られた経験がある」と回答しているようです。
また、賃貸を扱う不動産会社のうち4社に1社(25.7%)が高齢者の入居できる物件を扱っておらず、そもそも物件数が少ないことも注意点といえるでしょう。
賃貸を検討されている方は、安定した収入がある定年前に住み替えることをおすすめします。
参考:株式会社R65「高齢者向け賃貸に関する実態調査」
https://r65.info/dd499445-1303/
老後はマンションが向いている人は?
老後の住まいの選択肢として、「マンションが良いか」「それとも戸建てが良いか」は、人それぞれ異なります。
ここでは、老後はマンションで暮らす方が向いている人を考えてみましょう。
家事や管理の負担を軽減したい人
マンションはワンフロアが基本ですから、生活動線や家事動線が短くなります。
洗濯や掃除といった家事負担が軽減されるほか、建物の修繕メンテナンスも管理会社が行うため、管理負担も軽減できます。
利便性のよい立地を求めている人
立地の良さがマンションのメリットです。車が運転できなくなっても困らない生活を実現したい方は、マンションの方が物件を探しやすいです。
相続時の負担を抑えたい人
立地の良さは、相続時にも有効です。
仮に、相続された方が物件を売却する際、買い手が付きやすいためスムーズに売却できるでしょう。遺された家族にとっても、安心感があります。
老後は戸建てが向いている人は?
続いて、老後の住まいに戸建てが向いている人の特徴をお伝えします。
趣味を楽しみたい人
マンションと比べて、戸建ては制限が少ないことが特徴です。
ペットと一緒に過ごしたり、ガーデニングやDIYを楽しんだりと、セカンドライフを謳歌するなら戸建ての方が適しています。
近所づきあいを大切にしたい人
プライバシーを守りつつも、ご近所さんとの付き合いが密になりやすいのも戸建ての特徴です。
住み慣れた土地なら住人同士の見守りあるので、安心して過ごせます。
ランニングコストを抑えたい人
戸建てなら、家賃もなければ管理費や修繕積立金もありません。
駐車場代も不要です。
万一に備えて修繕費を貯蓄しておく必要はあるものの、マンションよりもコストを抑えやすいです。
まとめ
老後に住み替えを検討されている方は、「どんなセカンドライフを実現したいか」を具体的にイメージすることから始めましょう。
その上で、実現しやすい住まいを選ぶことが大切です。
併せて、資金計画をしっかり検討することもポイントです。
特にマンションを検討されている方は、管理費や固定資産税などのランニングコストを含めてシミュレーションを行い、年金生活でもゆとりある暮らしを送れるよう、自己資金を蓄えておくと安心です。
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